管理人:

フットバッグフリースタイルをする上で避けては通れない技であるクリッパーですが、小澤さんの考えるクリッパー習得のためのコツとは何でしょうか?

 

小澤さん:
まず、私の考えるクリッパーの習得=ゴールとは“自然体でクリッパーが出来ること”だと考えています。

そのためのコツは“自分のクリッパーを見つける”ということではないでしょうか

 

管理人:

クリッパーが“出来ること”と“習得する”ことは違うということでしょうか?

 

小澤さん:
クリッパーは普段全く使わない筋肉や身体の使い方をするので、最初は一般的に言われているコツや練習量が必要ですし、それはそれでいいと思います。

ただ、「クリッパーが出来ること」はゴールではありません。

安定したクリッパーを習得することが大事であり、それはさらに難しい技をするためのベースを手に入れることだと思います。そのためには、無駄な動作や無駄な力を使わずにクリッパーが出来る“質”が求められると思います。

 

管理人:
質ですか。その質を上げるために「自分のクリッパーを見つける」ことが大事ということですね。

具体的にそれは「自分に適したフォームやタイミングを見つける」ということでしょうか?

 

小澤さん:
そうですね。必要以上に力んだり、無理をしないと出来ない姿勢やフォームだとバランスを失ってしまいます。

それでは繊細なコントロールが出来ないので安定感は出ないでしょう。

 

管理人:
なるほど。無理のないフォームはするべきではない、と。
とはいえ、最低限満たしておかなくてはいけないフォームの条件もあるかと思うのですが。例えば、インサイドが水平になっていることとか。

 

小澤さん:
インサイドについて最低限の話をするなら、バッグを捉えるスポットさえ平らになっていれば充分です。完全に水平である必要はありません。
『この技をするためにはこうしたほうがいい』とか『トッププレイヤーがこうしているからこうしなくては』などはあまり考えなくていいと思います。
実際に、バシェク・クロウダホンザ・ウェバーのクリッパーは美しいフォームをしていますが、ニック・ランデスのように明らかに異なるフォームを使うトッププレイヤーもいます。

恐らく彼らが互いのフォームを真似して蹴ったら、上手く蹴ることは出来ないでしょう。

 

管理人:
なるほど。

確かに驚くほどインサイドが傾いているトッププレイヤーもいますものね。例えばダミアン・ギエルニツキのような。
ちなみにその「バッグを捉えるスポット」というのは、ソールがつま先にかけて膨らんでいるあの箇所(写真)でしょうか?

 

第1回 インタビュー「クリッパーの真髄に迫る」

 

 

・ゲスト_小澤 巧さん (Japan Footbag Championships BIG3部門 2005.2009.2010 王者)

 

 

フットバッグフリースタイルの最初の関門にして、最も重要な技術であるクリッパー

「全ての道はクリッパーに続く」「何故フットバッグをするのか?そこにクリッパーがあるからさ」「鳴かぬなら鳴くまで待とうクリッパー」など数多くの名言にも登場するクリッパー。今回は、その習得への道に迫ります。

 

ゲストには、日本を代表するフットバッグプレイヤーである小澤巧さん。

世界を知る彼ならではの、クリッパー習得のためのアプローチ方法や考え方など、参考にしてみてはいかがでしょうか。

小澤さん:
一般的な足首の柔軟性だとそのあたりだと思います。
もっと足首が柔らかい人なら、土踏まずや、もっとかかとに近い位置で蹴る人もいますね。僕なんかはそのタイプです。

 

管理人:
なるほど。

足首が柔軟であれば平らになる場所は広がる、が、そのために無理なフォームをするべきではなく、それよりも、ソールが膨らんだの箇所を利用して自然なフォームで蹴るほうがいいということですね。
先程『この技をするためにはこうしたほうがいい』というのは考えなくていい、と仰っていましたが、例えば、“普通のクリッパー”と“ステッピングのためのクリッパー”はまったく同じでいいのでしょうか?

 

小澤さん:
上半身の体勢や細かい重心の調整はありますが、下半身については普通のクリッパーと同じであることが理想だと思います。

 

管理人:
あくまで基礎は同じということですね。

ちょっと、話を前に戻しましょう。
安定して蹴るための「自分のフォーム」を見つけるためには、どのようなアプローチをすればいいのでしょうか?
先程のお話ですと、最初は一般的なコツや練習量が必要とのことでしたが、次のステップに進むときには何を参考や指針にしたらいいのでしょうか?どのようなコツや練習が必要になるのでしょうか?

 

小澤さん:
自分のフォームを見つけるためにまず頭に入れておいてほしいことがあります。
コツというのは総じて“一般的なコツ”であり、“単にクリッパーが出来る”ためのコツでしかありません。言い換えると、万人に共通する“安定したクリッパーをするためのコツ”は存在しないと思います。
なので、ここからは自分にあったコツ(フォーム)を見つける“作業”になります。
「無理と無駄のない自分のフォームを見つける作業=質を高める作業」があり、そこから「反復練習をして精度や持久力を高めていく=量を重ねる作業」があるイメージです。
しかし、この順番を間違えるとやっかいなことになります。結局は練習しながら見つけていくことになるのですが、自分のフォームを見つけていない状態で反復練習の量を増やしてもなかなか上達しないのです。ですので、この順番のイメージは頭に入れておいてください。

 

管理人:
なるほど。

3つの段階「技が出来るまでの段階」「自分のフォームを探す段階」「反復練習で精度を高める段階」があり、その順序も大切なのですね。

 

小澤さん:
自分のフォームを探す段階で必要なのは練習というより“意識すること”ですね。
そして何を意識するかというと、大切なのはとにかく「力まないこと」です。

 

管理人:
「力まないこと」を意識する、ですか。

 

小澤さん:
はい。関節を“自然に曲がる角度”以上に筋力で無理矢理曲げたり、必要以上の力を関節や筋肉に加えたりすることは絶対にNGです。そのように力んでしまうと、バッグの重さを感じられなくなり、スムーズな動作や適切なパワーの出力が出来なくなってしまいます。そうすると安定がなくなりますし、必要以上に体力を消費してしまうのです。

必要最小限の力をかけて、自然かつスムーズに体をコントロールすることが大事なポイントです。

 

管理人:
具体的に、必要最小限の力とは、どの程度の力でしょうか?

 

小澤さん:
感覚的な話ですがイメージとしては「関節が固定されていればいい」程度です。

 

管理人:
なるほど。
ところで、今のお話の中で「バッグの重さを感じる」「適切なパワーの出力」という表現をしていらっしゃいましたが、これは力まないこととどのように関係するのでしょうか?

 

小澤さん:
手の動作に例えると、こんなイメージです。
何でもいいのですが、例えばスマートフォンを手で持って、天井すれすれの高さまで投げてキャッチしてみてください。
その時に関節や手、指に力を入れてガチガチの状態で投げる事は絶対してないですよね。
無意識のうちにですが、絶対に脱力をしてて、でも必要な力だけ残して「重さを感じて」投げているんです。
逆に、肩から指先まで目一杯力を入れた状態で投げてみてください。力加減、つまり「パワーの出力」が頭の中でイメージできないので、動作が制御できず上手くスマートフォンをコントロールできないと思います。スムーズに動かすことすらやり辛いはずです。
繊細なコントロール、適切なパワーの出力、スムーズな可動は、全て力まず脱力してこそ出来る、ということなんです。

 

管理人:
なるほど。確かにそうですね。

 

小澤さん:
重たい物の持つときには力を入れるので「重さ」を感じやすいですが、軽い物は「重さを感じる」ということを意識してなかったり、自然に力が入ってしまい感じることが出来ていないことも多いのです。

重さを感じる方法で言えば、他にもこういうものもあります。今度はスマートフォンを強く握ってみてください。その状態からフッと力を抜くと「重さ」が感じられると思います。
クリッパーの場合、複雑な姿勢と動きをするのでもう少し力が必要になりますが、これが先程話した「関節が固定されていればいい」程度の状態です。トッププレイヤーは無意識的に、この状態の「足」でバッグの重さを感じながらプレーしている訳ですね。

 

管理人:
手のような適切な脱力を、足でも無意識のうちに出来る必要があるわけですね。
ただ、そのような状態で蹴れているのか判断するのは難しい気がします。
例えば、「狙った高さや位置にセットできるか」というのは、いい練習方法なのでしょうか?それとも他に具体的・効率的な練習方法があるのでしょうか?

 

小澤さん:
感覚を掴むことが重要なので、練習方法は何でもいいと思います。
強いて言えば、連続のクリッパーの練習よりも、1回1回丁寧に意識しながらクリッパーの動作を行ったほうが感覚が掴めるのではないでしょうか。他には、インサイドにバッグを載せた状態で足を軽く上下させて、「重さを感じられているか」「無駄な力みや無理な動きがないか」研究をするのは良いと思います。
いずれにせよ、どこにセットするかのイメージを持っている必要はあります。

 

管理人:
小澤さんは蹴っているときには、常に「どこにセットするか」の明確なイメージを持ってるんですか。

 

小澤さん:
はい、持っています。
イメージと実際のバッグの軌道や高さ・位置があっているほど、次の動きがスムーズになるのでより安定感がでるのです。

 

管理人:
そもそもイメージ=目標を持ってなければ、コントロールしようがないですものね。

 

小澤さん:
そのようなイメージをあまり持たない蹴り方をするタイプのプレイヤーもいます。言葉にすると「型」で蹴るタイプとでも言うのでしょうか。このタイプは、単純な反復練習で覚えた「型」で蹴る=決められた動きを体か覚えているので、体のバランスが崩れた時や疲れてる時、緊張した場合などに同じ動きが出来ないことがあります。このタイプは、セットの高さにバラツキがあるのが特徴です。
トッププレイヤーにもこのタイプはいますが、体幹の強さや練習量でそれをカバーしているのではないでしょうか。

 

管理人:
なるほど。決められた動きをするので、イメージを持たなくても同じ結果になる。ただ、決められた動き以外には対応できないということですか。

 

小澤さん:
フットバッグはドロップをしないことが優先されるべきだと思うので、その点で「型」タイプはリスキーです。
それよりも、状況に合わせたイメージを持つ感覚と、それを実現するコントロールスキルを磨いたほうが効率的だと考えています。

またそのための練習方法でもう一工夫するなら、軽いバッグを使っての練習もいいでしょう。

重たいバッグは重さを感じやすいので、軽くて転がるバッグを使うことでその感覚を鋭くすることが出来るはずです。

 

管理人:
帰ったら蹴りづらくて使っていなかった軽いバッグを探してみます。

 

小澤さん:

「自分のクリッパー」を見つけることが出来れば、その後のレベルアップのスピードを確実に早めることが出来ます。

とても大事な基礎技術なので、自分なりに研究したり、工夫をして、しっかりと習得してください。

 

管理人:

まさに「クリッパーは一日にてならず」ですね。